【 腱鞘炎とは 】

身体を動かす関節につながる筋肉、
その一端は、ひも状の腱(けん)となって筋肉と骨をつないでいます。
腱鞘とはその腱を包む鞘(さや)で、なかに滑液を満たし腱の動きを滑らかにしています。
この腱と腱鞘の間の滑らかな動きが障害されて、炎症を起こしている状態を
狭窄性腱鞘炎(きょうさくせいけんしょうえん)とよびます。
炎症部位を腱が通る時に発生する腫脹部位の摩擦などが、
腱鞘炎とよばれる強い痛みやしびれ症状を発症あらわします。


【 腱鞘炎の症状 】

部位の強い痛み、腫脹や痺れや熱感症状が多くみられます。
腱に近い炎症部分の関節を少しでも動かすと、
引きつるような強い痛み、炎症部分の動かしにくさが腱鞘炎の特徴となります。
腱鞘炎は、炎症が悪化する以前に前駆症状をあらわします。
酷使している部位のだるさや動かしにくさ、関節の違和感や熱感、
または、関節を動かす時のきしみ感覚や不自然な音がする場合、
腱鞘炎の初期症状がうたがわれます。

腱鞘炎というと手指をイメージしがちですが、腱・腱鞘がある部位、
手・指・肘・足首など様々な部位に腱鞘炎は発生します。
手指の狭窄性腱鞘炎ではドゥケルヴァン病やバネ指(弾発指)、
肘関節の狭窄性腱鞘炎では、テニス肘や野球肘などがよく知られています。


【 腱鞘炎の原因 】

腱鞘炎のほとんどが日常的に酷使する関節部位に発症することから、
職業上や習慣的に行う動作による、関節への過度な負荷が要因として考えられています。
デスクワークの方や楽器演奏者、テニスや野球などのスポーツをする方、
手仕事や家事にて、同じ部位をを長時間もしくは断続的に使い続ける人に多くみられます。
また、ホルモンバランスの変化の影響によって発症しやすく、
妊娠出産時期や更年期の女性に発症しやすいことが知られています。

妊娠出産や閉経などによるホルモンバランスの変化のほかに、
ストレスや過労、睡眠不足などの自律神経の乱れも、
ホルモンバランスの乱れと同様に症状をあらわすの要因となります。
また、男性でも年齢によるホルモンバランスの変化から、
男性更年期症状として、女性の更年期と同様の腱鞘炎や各種症状があらわれます。



【 女性と腱鞘炎 】

女性が男性よりも腱鞘炎になりやすい要因としては、
筋肉量が男性よりも少なく、腱が細いことが原因の一つにあげられます。
細い腱であるほど日常的な負荷に対する負担も大きく、
同じ動作をおこなっても炎症をおこす割合は高くなります。

また、ホルモンバランスの変化の影響も要因にあげられます。
女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンという2つのホルモンがあります。

妊娠・出産の際に多く分泌されるプロゲステロンは、
出産のためにゆるんだ子宮や骨盤を元に戻すために腱鞘を収縮させる作用があります。
ホルモンは全身に影響するため、産後はプロゲステロンの作用により、
骨盤周辺だけではなく全身の腱鞘が収縮して、腱と腱鞘の摩擦を起こしやすくなります。
その上、乳幼児のお母さんは子供を頻繁に抱っこして家事をこなすために
関節(特に手首)の酷使が加わり、腱鞘炎が頻発します。
プロゲステロンの作用は、出産後もしばらく続くために、
腱鞘炎以外に膝関節痛など各種関節痛を発症しやすくなります。

エストロゲンには腱や腱鞘をやわらかく、弾力性を保持する働きがあります。
更年期を迎えると、閉経によってエストロゲンの分泌が急激に減少するため、
腱や腱鞘の柔軟性が低下、摩擦が起こりやすくなり腱鞘炎が発症しやすくなります。



【 回復のために 】

腱鞘炎は、日常的な負荷を避けて安静にすることが可能であれば治りやすい反面、
日常的な過度な負荷が軽減されないと、負荷の積み重ねによって慢性化・再発しやすく、
回復までにも時間がかかりやすくなります。
初期症状は、指や腕を動かしたときに痛みを感じる、違和感があるという程度ですが、
特定動作をおこなわずに ” 痛み ” や ” しびれ ” を持続して感じられる、
関節の腫脹がみられる状態は慢性化の徴候となります。

腱鞘炎は、早めに気付いて治療すれば慢性化することなく早期に回復できるため、
違和感を感じた時に休息をとることが、予防・回復・治癒の一番の方法となります。
慢性化や再発を防ぐためには、原因部位の筋肉を酷使をしない事が一番ですが、
仕事や生活上休息がむずかしい場合は、周辺の筋肉の疲れをほぐすことが必要となります。

総合病院や整形外科では、症状の程度に応じて、
「 保存的療法 」 「 ステロイド注射 」 「 腱鞘切開手術 」 
が、治療方法の主となります。
腱鞘炎が多発する場合はリウマチが原因のことも考えられるため、
その様な場合は、専門医の受診をお勧めします。


【 鍼灸治療では 】

腱鞘炎は、慢性的な筋肉疲労から炎症を発症している状態です。
痛み部位の症状が強いために、その箇所だけが問題であると思われがちですが、
慢性的な炎症をあらわしている身体の状態は、疲労が積み重なって、
痛みの部位だけでなく、身体全体の筋肉が緊張し疲労しています。

疲労が蓄積した筋肉は柔軟性を失い、十分な伸縮ができなくなるために、
筋の終着である関節部位にストレスがかかり、
スムーズな関節運動ができずに炎症が起きてしまいます。
局所治療やステロイド注射にて、一時的に炎症は解消されますが、
全身的な治療をしないかぎり再発を繰り返すケースが多くなります。
手指の腱鞘炎の場合でも、首、肩、背中、腰など全身の緊張が強いことが多く、
腕肘部だけでなく肩背部や全身の柔軟性を高めることが必要となります。

ホルモン変化の影響が症状に関わっている場合、自律神経も乱れていることが多く、
ホルモンバランスと自律神経状態、両者の改善が重要となります。
痛みの部位のみの治療よりも、むしろホルモンバランスを整えることが大切になるため、
鍼灸治療では、全身治療で身体の回復力を高めたうえで痛みの部位の治療をおこないます。

症状の重さにより個人差がありますが、
当院では、効果的な機能回復の為には週1~2回ほどの通院をおすすめしております。


【 東洋医学的な観方 】

東洋医学的な観点では、腱鞘炎は血虚や瘀血(おけつ)による
熱症状として捉えられます。
筋の使いすぎや過度な負荷による疲労の積みかさなったために
血虚や瘀血(おけつ)状態となり、気血が滞ったために
虚熱が経絡に波及して痛みや腫脹が発生していると考えられます。

治療では、全身治療にて血虚状態を改善させてから、
痛みを発生させている経絡の気の滞りを改善して、
熱の停滞を解消することによって痛みを和らげていきます。
また、更年期や各種手術後の瘀血(おけつ)が考えられる場合、
瘀血(おけつ)状態を改善させてから、経絡の気血の滞りを解消していきます。

寒熱の観点では熱証と考えられますが、
身体全体の状態は痛みの部位以外は冷えていることが多く、
虚労やストレスにより胃腸の状態が低下していることが多いようです。
睡眠状態の改善や脾胃の状態の改善、
胃の気の状態の安定が必要となるケースも多いように感じます。



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【 ばね指 】

指の屈筋腱に起こる腱鞘炎のことで「弾発指」とも呼ばれています。
バネ指は、指の腱鞘に炎症が起きて指を屈曲あるいは伸展しようとすると
中途でひっかかったようになり、指の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなります。
無理に力を入れたり他動的に動かそうとすると、ばね仕掛けのように
突発的に屈曲あるいは伸展の動作がおこります(弾撥現象)。
指の付け根と手の平側に痛みを生じ、ひどくなると曲げた指を自動的に
のばせなくなるため、握る・掴む動作がむずかしくなるなど日常生活にも支障をきたします。
手の母指に多くみられますが、すべての指に発生する可能性があります。


【 ド・ケルヴァン病 ( de Quervain )  】

手首の親指側の腱鞘(長母指外転筋および短母指伸筋の腱鞘)に慢性炎症が起こり、
腱鞘が肥厚、瘢痕化、腱と腱鞘間の狭窄、癒着をきたし痛みを発します。
局所を中心として強い圧痛があり、脹れ・発赤も多くみられます。
物を握る、つまむ、タオルをしぼるなどの動作で痛みを強く感じます。

ドゥケルヴァン病の診断方法 
フィンケルスタイン(Finkelstein)テスト ― 
親指を中に入れグーを作り、小指側へゆっくり回します。
その時手首に痛みを感じたらドゥケルバン腱鞘炎の疑いがあります。

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