腱鞘炎

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腱鞘炎の定義

身体を動かす関節につながっている筋肉。
その一端は、ひも状の腱(けん)となって筋肉と骨をつないでいます。 腱鞘とはその腱を包む鞘(さや)で、滑液を満たし腱の動きを滑らかにしています。

この腱と腱鞘の間の滑らかな動きが障害されて、炎症を起こしている状態が狭窄性腱鞘炎。
腱鞘が圧迫されて狭まれています。

炎症部位を腱が通る時に発生する腫脹部位の摩擦などが、 腱鞘炎とよばれる強い痛みやしびれ症状をあらわします。

腱鞘炎の症状

腱鞘炎は、腱に近い炎症部分の関節を少しでも動かした時に感じる引きつるような強い痛み、炎症部分の動かしにくさが特徴です。手首など関節部位の強い痛み、腫脹や痺れ、熱感があらわれます。

腱鞘炎は炎症が悪化する前に、前駆症状みられます。
酷使している部位のだるさや動かしにくさ、関節の違和感や熱感、 または関節を動かす時のきしみ感、不自然な音がする場合、 腱鞘炎の初期症状がうたがわれます。

腱鞘炎というと手指や手首をイメージしますが、手・指・肘・足首など腱・腱鞘がある様々な部位で発生します。

手指の狭窄性腱鞘炎ではバネ指(弾発指)やドゥケルヴァン病、 肘関節の狭窄性腱鞘炎では、テニス肘や野球肘などがよく知られています。

腱鞘炎があらわれやすい人 ~ 日常の過度な負荷・疲労の蓄積

腱鞘炎のほとんどが日常的に酷使する関節部位に発症することから、 職業や習慣的な動作による関節の過度な負荷が要因に挙げられます。

腱鞘炎は、同じ部位を長時間もしくは断続的に使い続ける人に多くみられます。

・デスクワーク
・楽器演奏者
・テニスや野球などのスポーツ
・手仕事(手芸・絵画ほか)
・家事
・育児

腱鞘炎は 限局的な強い痛みのために、痛みの部位だけに問題があると思われがちですが、関節や筋肉の慢性的な疲労が重なって炎症がおきている状態です。

痛みの部位以外の関連する筋肉(肩・首・背中)が張っている、こり固まって動かしづらくなっているケースが多くみられます。

日常的な動作による継続的な負荷、疲労の積み重なりにより関節や周辺の筋肉は緊張します。

筋肉の緊張が続くと、 痛みがあらわれている部位だけでなく周囲の筋肉の血流が低下、酸素や栄養がいきわたらずに更に疲労が蓄積されます。

疲労が蓄積した筋肉は柔軟性を失い、十分な伸縮ができなくなります。

筋肉の収縮性が失われると関節部位にストレスがかかり、スムーズな関節運動ができずに炎症が起こり腱鞘炎となります。

病的な理由がなく腱鞘炎をくり返す場合、身体の使い方や生活習慣の改善が必要となります。

西洋医学では

病院・クリニックでは、「 保存的療法 」「 服薬・注射 」「 手術 」が主となります。

局所的な炎症を解消しても、関節の酷使による負荷や疲労が軽減されないと再発を繰り返しやすくなります。

腱鞘炎が多発する場合、ほかの病気も考えられます。(リウマチ等)
関節の炎症と痛みが頻発する場は合、適切な医療機関の受診をお勧めします。

女性ホルモンの変化と腱鞘炎

女性が男性よりも腱鞘炎になりやすい要因として、 筋肉量が男性よりも少なく、腱が細いことが原因の一つにあげられます。 細い腱であるほど日常的な負荷に対する負担も大きく、同じ動作をおこなっても炎症をおこす割合は高くなります。

腱鞘炎は 妊娠出産時期や更年期の女性に多いことが知られています。
これは女性ホルモンのバランスの変化の影響です。

出産後の腱鞘炎・関節炎

女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンという2つのホルモンがあります。

出産後はプロゲステロンの作用により、 腱鞘炎や関節痛など身体の痛みがおこりやすくなります。

プロゲステロンは、妊娠・出産の際に多く分泌されますが、 出産時にゆるんだ子宮や骨盤を元に戻すために腱鞘を収縮させる作用があります。

ホルモンは全身に影響を与えるため、子宮や骨盤周辺だけでなく全身の腱鞘が収縮して、腱と腱鞘の摩擦が起こりやすくなります。

その上、乳幼児のお母さんは子供を頻繁に抱っこして家事をこなすために関節(特に手首)の酷使が加わり、腱鞘炎が頻発します。

プロゲステロンの作用は、出産後もしばらく続くために、腱鞘炎以外に膝関節痛や股関節痛など各種関節痛を発症しやすくなります。

更年期の腱鞘炎・関節炎

エストロゲンには腱や腱鞘をやわらかく、弾力性を保持する働きがあります。

更年期を迎えると、閉経によってエストロゲンの分泌が急激に減少するため、 腱や腱鞘の柔軟性が低下、摩擦が起こりやすくなり腱鞘炎が発症しやすくなります。

妊娠出産や閉経などによるホルモンバランスの変化のほか、 ストレスや過労、睡眠不足などの自律神経の乱れも、 ホルモンバランスの乱れと同様に腱鞘炎の要因となります。

男性でも年齢によるホルモンバランスの変化から、 男性更年期症状として、女性の更年期と同様の腱鞘炎や各種更年期症状があらわれやすくなります。

ばね指

指の屈筋腱に起こる腱鞘炎のことで「弾発指」とも呼ばれています。 バネ指は、指の腱鞘に炎症が起きて指を屈曲あるいは伸展しようとすると 中途でひっかかったようになり、指の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなります。

無理に力を入れたり他動的に動かそうとすると、ばね仕掛けのように 突発的に屈曲あるいは伸展の動作がおこります(弾撥現象)。

指の付け根と手の平側に痛みを生じ、ひどくなると曲げた指を自動的にのばせなくなるため、握る・掴む動作がむずかしくなるなど日常生活にも支障をきたします。手の母指に多くみられますが、すべての指に発生する可能性があります。

ド・ケルヴァン病 ( de Quervain )

手首の親指側の腱鞘(長母指外転筋および短母指伸筋の腱鞘)に慢性炎症が起こり、腱鞘が肥厚、瘢痕化、腱と腱鞘間の狭窄、癒着をきたし痛みを発します。

局所を中心として強い圧痛があり、脹れ・発赤も多くみられます。
物を握る、つまむ、タオルをしぼるなどの動作で痛みを強く感じます。

ドゥケルヴァン病の診断方法

フィンケルスタイン(Finkelstein)テスト ―
親指を中に入れグーを作り、小指側へゆっくり回します。
その時手首に痛みを感じたらドゥケルバン腱鞘炎の疑いがあります。

腱鞘炎の鍼灸

腱鞘炎は女性に多い症状です。男性よりも筋肉量が少ないこと、筋肉や腱が女性ホルモンの変化の影響を受けることが要因として挙げられます。

当院では、痛みや疲労を取り除くためには手首・腕・肘部だけでなく肩背部の柔軟性を高める必要性があると考えています。施術では痛みの部位以外に、周辺部位や身体のバランス調整を行います。

デスクワークの方は同じ姿勢でいることが多く、腕や手首だけでなく、首、肩、背中に疲労が蓄積された結果、腱鞘炎になる方が多いです。
この場合は日常的な姿勢や癖を見直して局所に掛かる負担を減らすことも大切です。

産後や更年期の腱鞘炎は、自律神経系や女性ホルモンバランスを整えることが大切になります。この場合は身体の調整をメインとして、その上で手首や腕肘など痛みの部位に鍼とお灸をおこないます。

個人差がありますが、効果的な機能回復の為に週1~2回ほどの通院をおすすめしております。

腱鞘炎 ~ 鍼灸・東洋医学的な観方

東洋医学的な観点では、 腱鞘炎は筋の使いすぎや過度な負荷による疲労の積み重なりから、血虚や瘀血(おけつ)の状態となり、気血が滞ったために虚熱が経絡に波及して痛みや腫脹が発生している状態と捉えます。

血虚や瘀血(おけつ)による 熱症状として捉えられるため、寒熱の観点では熱証と考えられますが、身体全体の状態は痛みの部位以外は冷えている寒証、冷え性の方が多く、気血の滞りから、熱と冷えのバランスの悪さが問題となっていることが多くみられます。

当院の施術では、経絡の気血の滞りを改善、気血のバランスを安定させ、寒熱の停滞を解消することで痛みを和らげます。

更年期・産後・手術後の腱鞘炎 ~ 気血の滞り・瘀血(おけつ)

産後や手術後、更年期は、瘀血(おけつ)も考慮します。

瘀血=血の停滞が強いと更なる気血の停滞が引き起こしやすくなります。

産後や術後は特に血虚や気虚が顕著で、冷え、または冷えのぼせの方が多いです。更年期で疲れやすい方も気血のバランスが取りづらくなっている方が多い。

これらは気や血が足りていないのに局所的に滞っている状態で、虚労やストレスにより胃腸の状態が不安定な方が多い。(食欲不振、食欲過剰、胃痛など)

エネルギーを消耗している方が多く、脾胃・胃の気の状態、睡眠の安定も必要となります。

腱鞘炎 ~ 早期回復のために

腱鞘炎は、早めに気付いて治療をおこなうと、慢性化することなく早期に回復できます。 違和感を感じた時に休息をとることが、予防・回復・治癒の一番です。

日常的な負荷を避けて安静にしていれば治りやすい反面、 日常的な負荷が軽減されないと、負荷の積み重ねによって再発・ 慢性化しやすく、 回復までにも時間がかかります。

腱鞘炎の初期症状は、指や腕を動かしたときに痛みを感じる、違和感があるという程度です。 特定動作をおこなわない状態で 『 痛み 』 や 『 しびれ 』 が持続して感じられる、関節の腫脹がみられる状態は慢性化の徴候です。

初期症状があらわれた段階で家事や仕事の負荷を軽減する、または軽減できなくでも睡眠等の休息をしっかりとることが大切です。

休息が難しい時

慢性化や再発を防ぐためには、炎症部位の筋肉を酷使をしない事が一番ですが、 仕事や生活上の休息がむずかしい場合には、周辺の筋肉の緊張をゆるめて疲労をとりのぞく必要があります。

鍼やお灸はもちろん、ご自身に合った方法で身体の疲れを癒すことが大切です。

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