薄味に慣れる ~ 舌は生まれ変わる [40代からの食養生]

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舌の役割と味覚センサー

私たちの舌は、食べ物をだ液と混ぜ合わせて消化を助けたり、飲み込む、会話をするなど重要な役割を担っています。

舌の表面には、舌乳頭(ぜつにゅうとう)と呼ばれるざらざらとした小さな突起が多数存在しており、味を感知する器官= 『 味蕾(みらい)』 は、この舌乳頭の部分に集まっています。味覚は、味蕾細胞が味刺激を受けることで感じられます。

味蕾細胞は味覚センサーであり、薄味や濃い味、 塩味・甘味(糖)・苦味・辛味・酸味 ・脂肪・旨みといった、毎日の食事を美味しく食べるための『 味覚の感知 』という重要な役割も担っています。

『 味蕾(みらい)』 と 味覚

私たちが美味しいと感じる味覚には、塩味・甘味(糖)・苦味・辛味・酸味 ・脂肪・旨みなど様々な種類があります。 食事を美味しいと感じるためには、味覚=舌の感覚だけでなく視覚や嗅覚(匂い)、温冷覚など五感を含めた様々な感覚に左右されています。

食事の好み、好き嫌いは、生まれ育った地域、家庭の影響など個人の主観にもよりますが、 調味料過多の「 外食 」や 「 コンビニ食 」が多くなると、 味覚センサーのはたらきが低下して濃い味付けを好みやすくなります。

薄味に慣れる

『 味蕾(みらい)』= 味覚センサーがしっかり働いていると、適切な味付けの食事を美味しいと感じることができます。味覚センサーの働きがにぶくなると、味そのものが感じられなくなり、食事をしても 「 味がしない 」 感覚を覚えます。

疲れている時や風邪をひいている時に料理の味が濃くなるのは、味覚センサーの低下によるもの。この場合は体調が戻れば味覚も戻ります。

日常的に薄味をもの足りないと感じる舌感覚の低下は、 亜鉛不足や化学調味料のとりすぎ、刺激物の過剰摂取によって『 味蕾(みらい)』の味覚センサーの働きが低下の可能性があります。

栄養不足や過多、偏りによる味覚センサーの低下は、舌の細胞が生まれ変わるサイクルに応じた味覚の再教育が必要になります。

正常な味覚をとりもどす ~ 舌細胞・ 味蕾は生まれ変わる

食習慣や食嗜好について、胃腸の強さや年齢・体力によるものと考えがちですが、私たちの『 食事の嗜好 』は、『 味覚 』だけでなく『 視覚・嗅覚・満腹中枢 』など『 満足感を統合している脳 』に支配されています。

生まれ育った地域・家庭の食嗜好、過去の食習慣は変えられませんが、これからの食事によって健康的な味覚をとりもどし、『 新しい食習慣 』『 食事の嗜好 』を獲得することができます。

薄味に慣れる2

『 味蕾(みらい)』 は約一か月で生まれ変わります
薄味を一か月続けてみましょう!

私たちの身体の細胞は絶えず生まれ変わっています。『 味蕾(みらい)』は身体の中でも新陳代謝が活発な細胞で、 約1か月で新しい細胞に生まれ変わっているといわれます。

舌の細胞、『 味蕾(みらい)』 が生まれ変わるまでの期間の一ケ月間、 薄味の食事を続けてみましょう。 濃い味付けになじんできた方も、 味蕾が生まれ変わるころには薄味に満足できるようになります。

亜鉛とミネラルをしっかり補給しましょう

味蕾の新陳代謝に必要不可欠なのが「 亜鉛 」。亜鉛が不足すると、新しい味蕾を作る細胞分裂がうまくいかなくなり、味覚低下を引き起こします。

亜鉛は動物性食品に多く含まれています。肉類、魚貝類、大豆や種子、乳製品などタンパク質の摂取と共に、栄養摂取の働きを助けるミネラルが豊富な海藻やひじきなど乾物の組み合わせがおすすめです。

食事の満足感 = ボリューム感ではありません

味覚センサーの働きが低下すると、素材そのものの味に満足感が得られずに濃い味付けになります。また、薄味の食事に満足感が得られないと、食事の量で満足感を得ようとします。腹持ちの良さ=食事量を満たすために食べ過ぎてしまいます。

塩分、糖分、脂質ほか化学調味料の過多 + 食事量そのものの増加は、生活習慣病が心配になる悪循環。

味付けが濃くなりがちな方は、調理の時の目分量は厳禁。 塩分・糖分・脂質など調味料を計測して、摂取量を確認してみてください。 基準量より多かったら思い切って減らしましょう。

濃い味付けを一気に変えられなくても、『 舌の細胞が生まれ変わるサイクル毎 』 に食事を見直すことで、調味料の味ではなく食物そのものの味・素材の味が感じられるようになります。

健康的な食生活のために

暴飲暴食をしなくても、外食が続くと「 舌の味覚センサー 」が味付けの濃さに慣らされてしまいます。味覚センサーの働きが適正であれば、過剰な味付けだけでなく、食事量も適正で満足できるようになるので過食防止となり太りにくくなります。

舌の感覚・味覚を取り戻すことは、健康的な食生活と生活習慣病の予防にもつながります。

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