腱鞘炎への鍼灸
腱鞘炎は、手を頻繁に使う方、スマートフォンやパソコンを長時間使用する方、ホルモンバランスが変化する産後の育児中、更年期の方に発症しやすい傾向です。
特に女性に多く、日常の手の使い方が大きく関わる症状です。
鍼灸は、筋肉の緊張を緩めることで腱鞘炎の痛みや炎症を緩和します。
「手を休めるのが難しい」「痛みをなんとかしたい」という方は、ぜひご相談ください。
デスクワークの腱鞘炎
デスクワークの方は同じ姿勢でいることが多く、腕や手首だけでなく、首、肩、背中に疲労が蓄積された結果、腱鞘炎になる方が多いです。
鍼灸施術では、痛みの箇所以外の身体のバランスを考慮して調整を行います。
産後や更年期の腱鞘炎
産後や更年期の腱鞘炎は、自律神経系や女性ホルモンバランスを整えることが大切になります。
身体の調整をメインとして、その上で手首や腕肘など痛みの部位に鍼とお灸をおこないます。
腱鞘炎とは?
腱鞘炎(けんしょうえん)は、指や手首を動かす際に痛みや違和感を感じる症状です。
指や手首の腱を包む「腱鞘(けんしょう)」と呼ばれる組織が炎症を起こし、腫れたり、スムーズに動かなくなったりすることで発生します。
初期の段階では違和感や軽い痛み程度ですが、悪化すると強い痛みで日常生活に支障をきたすことがあります。
腱鞘炎の症状
腱鞘炎は、手首など関節部位の強い痛み、腫脹や痺れ、熱感があらわれます。
- 手首など関節部位の強い痛み
- 腫脹や痺れ
- 炎症部分の動かしにくさ
- 狭窄性腱鞘炎によるバネ指やドゥケルヴァン病
ばね指 / ド・ケルヴァン病 ( de Quervain )
ばね指
指の屈筋腱に起こる腱鞘炎のことで「弾発指」とも呼ばれています。
バネ指は、指の腱鞘に炎症が起きて指を屈曲あるいは伸展しようとすると 中途でひっかかったようになり、指の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなります。
無理に力を入れたり他動的に動かそうとすると、ばね仕掛けのように 突発的に屈曲あるいは伸展の動作がおこります(弾撥現象)。
指の付け根と手の平側に痛みを生じ、ひどくなると曲げた指を自動的にのばせなくなるため、握る・掴む動作がむずかしくなるなど日常生活にも支障をきたします。
手の母指に多くみられますが、すべての指に発生する可能性があります。
ド・ケルヴァン病 ( de Quervain )
手首の親指側の腱鞘(長母指外転筋および短母指伸筋の腱鞘)に慢性炎症が起こり、腱鞘が肥厚、瘢痕化、腱と腱鞘間の狭窄、癒着をきたし痛みを発します。
局所を中心として強い圧痛があり、脹れ・発赤も多くみられます。
物を握ったり、つまんだり、タオルを絞るなどの動作で痛みを強く感じます。
ドゥケルヴァン病の診断方法
フィンケルスタインテスト(Finkelstein)
親指を中に入れグーを作り、小指側へゆっくり回します。
その時手首に痛みを感じたらドゥケルバン腱鞘炎の疑いがあります。
腱鞘炎になりやすい方
腱鞘炎の原因には、職業や習慣的な動作による関節への過度な負荷が含まれます。
腱鞘炎は、同じ部位を長時間もしくは断続的に使い続ける人に多くみられます。
・長時間のパソコン作業やスマートフォン操作をする方
・料理や楽器演奏など、指や手首を酷使する方
・ホルモンバランスの変化が影響しやすい女性(妊娠・出産・更年期)
・手仕事(手芸・絵画ほか)
・育児
腱鞘炎は 限局的な強い痛みのために、痛みの部位だけに問題があると思われがちですが、関節や筋肉の慢性的な疲労が重なって炎症がおきている状態です。
痛みの部位以外の関連する筋肉(肩・首・背中)が張っている、こり固まって動かしづらくなっているケースが多くみられます。
当院の鍼灸は、痛みの限局部位だけでなく関連部位を緩めることで、痛みの緩和を後押しします。
女性と腱鞘炎の関係
女性は男性に比べて腱鞘炎になりやすい傾向があります。
その主な理由は、ホルモンバランスの変化や生活習慣、筋肉量が男性よりも少なく腱が細いことが挙げられます。
1. ホルモンの影響
妊娠・出産、更年期において、女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の変動が腱や腱鞘の柔軟性に影響を与えます。
特に、産後の授乳期にはホルモンバランスの変化により腱鞘が炎症を起こしやすくなり、赤ちゃんの抱っこなど姿勢の負担が重なることで悪化しやすくなります。
2. 筋肉量・筋力
男性に比べて筋力が弱い女性は、同じ負荷でも手首や指にかかる負担が大きくなります。
細い腱であるほど負担も大きく、同じ動作をおこなっても腱鞘炎をおこす割合は高くなります。
3. 更年期と腱鞘炎
更年期になると、エストロゲンの分泌が減少し関節や腱の弾力性が低下、腱鞘炎が起こりやすくなります。
男性でも年齢によるホルモンバランスの変化から、 男性更年期症状として腱鞘炎があらわれやすくなります。
腱鞘炎の一般的な治療法
腱鞘炎の一般的な治療方法としては、安静・湿布・ストレッチ・サポーターの使用などが挙げられます。
症状が進行すると、医療機関にて、ステロイド注射や手術を勧められることもあります。
腱鞘炎が多発する場合、リウマチ等ほかの病気も考えられます。
関節の炎症と痛みが頻発する場合は、適切な医療機関の受診をお勧めします。
鍼灸による腱鞘炎のケア
鍼灸は、腱鞘炎の痛みや炎症の軽減をサポートとします。
- 血流促進:痛みの原因となる筋肉の緊張を緩め、炎症を和らげる。
- 副作用が少ない:薬や注射に頼らない。
当院では、痛みや疲労を取り除くためには、手首・腕・肘部だけでなく肩背部の柔軟性を高める必要性があると考えて鍼灸施術をしています。
鍼灸のアプローチ
1. 筋肉の緊張を緩和
鍼を用いることで、手や腕の筋肉の緊張を和らげ、腱や腱鞘への負担を軽減します。
2. 血流を促進
お灸や鍼による施術で血流を改善し、炎症の回復を早めます。
3. 神経のバランスを整える
自律神経の調整を行うことで、痛みを抑える効果が期待できます。
4. 炎症を鎮めるツボ刺激
特定のツボ(曲池、合谷、外関など)を刺激し、炎症を抑える効果を引き出します。
鍼灸では、腱鞘炎の症状に対して、痛みの軽減や炎症の鎮静を目的としたアプローチを行います。特に、以下のツボを刺激することで、血流を促進し、手首や指の動きを改善する効果が期待できます。
腱鞘炎の鍼灸で用いる代表的なツボ(経穴)
- 合谷(ごうこく) – 手の甲にあるツボで、手や腕の痛み、炎症の緩和に効果があるとされています。腱鞘炎の痛みを和らげるためによく使われます。
- 曲池(きょくち) – 肘の外側にあるツボで、炎症を抑える効果が期待できます。腱鞘炎が慢性的な場合に有効です。
- 外関(がいかん) – 手首の甲側にあるツボで、手首の可動域を改善し、痛みを軽減するのに役立ちます。
- 陽池(ようち) – 手首の背面にあるツボで、腱や関節の柔軟性を高めるのに有効です。
これらのツボに鍼やお灸を用いることで、血行を促し、炎症の回復をサポートします。
5. 姿勢や動作の改善指導
手や腕の負担を軽減するために、正しい姿勢や日常の動作の見直しをアドバイスします。
腱鞘炎 ~ 鍼灸・東洋医学的な観方
当院では、東洋医学的な観点から身体を診て、総合的な判断をしております。
腱鞘炎は気血が滞ったために血虚や瘀血(おけつ)状態となり、虚熱が経絡に波及して痛みや腫脹が発生していると捉えます。
寒証、冷え性の方も多く、気血の滞りによる熱と冷えのバランスの悪さが多くみられます。
当院の鍼灸では、経絡の気血の滞りを改善、気血のバランス、寒熱の停滞を解消することで痛みを和らげます。
更年期・産後・手術後の腱鞘炎 ~ 気血の滞り・瘀血(おけつ)
産後や手術後、更年期の腱鞘炎は、瘀血(おけつ)と気虚・血虚を一番に考えます。
瘀血=血の停滞が強いと、更なる気血の停滞が引き起こしやすくなります。
産後や術後は身体のダメージも多いため、血虚や気虚が顕著。
更年期で疲れやすい方は気血のバランスが不安定になりがち。
気や血が足りない、または局所的に滞っている状態です。
虚労やストレスにより胃腸の状態が不安定な方は(食欲不振、食欲過剰、胃痛など)、エネルギーの消耗から回復が難しくなっているため、体力の回復が必要。
脾胃・胃の気の状態、睡眠の安定が必要となります。
鍼灸はこんな方におすすめ
・薬に頼りたくない方
・長期間、手首や指の痛みに悩まされている方
・できるだけ早く痛みを軽減したい方
・日常生活で手をよく使う方
腱鞘炎 ~ 早期回復のために
腱鞘炎は、早めに気付いて治療をおこなうと、慢性化することなく早期に回復できます。
違和感を感じた時に休息をとることが、予防・回復・治癒の一番です。
日常的な負荷を避けて安静にしていれば治りやすい反面、 日常的な負荷が軽減されないと、負荷の積み重ねによって再発・ 慢性化しやすく、 回復までにも時間がかかります。
腱鞘炎の初期症状は、指や腕を動かしたときに痛みを感じる、違和感があるという程度です。
特定動作をおこなわない状態で 『 痛み 』 や 『 しびれ 』 が持続して感じられる、関節の腫脹がみられる状態は慢性化の徴候です。
初期症状があらわれた段階で家事や仕事の負荷を軽減する。
または負荷を軽減できなくでも睡眠等の休息をしっかりとることが大切です。
休息が難しい時
慢性化や再発を防ぐためには、炎症部位の筋肉を酷使しないことが重要です。
仕事や生活上の理由で休息が難しい場合には、周辺の筋肉の緊張を緩めて疲労を取り除く必要があります。
鍼灸施術の流れ
現在の痛みの状態、発症時期、日常の手の使い方を詳しく伺いします。
手首や指、腕に関連するツボに鍼を刺し、血流を改善します。
必要に応じてお灸を用い、温熱刺激で筋肉の緊張をほぐします。
痛みを感じにくい細い鍼を使用します。
鍼の刺激はほとんど痛みを感じない程度で、リラックスした状態で受けられます。
ご自宅でできる簡単なストレッチやセルフケアをお伝えします。
再発予防のため、手や腕に負担をかけにくい動作のアドバイスも行います。
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